「命の格差」をなくす、私たちの挑戦。

ジャパンハートは日本国内に加えて、東南アジアの後発開発途上国であるミャンマー、カンボジア、ラオスの3カ国でも医療活動を続けています。
これらの国々は、人口当たりの医師・看護師の数が日本の15分の1以下。医療へのアクセスが、日本よりもはるかに難しい状況にあります。
中でも、小児がんのように高度な医療が必要な病気にかかった患者が治療にたどり着くまでには、いくつもの大きな壁があります。

一つ目は、「専門知識のある医師に、正しい診断をしてもらうこと」。
これら3カ国に限らず、アジア全体(日本のある東アジアから東南アジア、インドのある南アジアに至るまでの地域全体)で、小児がん患者の半数近く、49%は正しい診断を受けることができていないという調査結果があります。医師の数が少ないということは、専門医はよりすくなくなるということ。たとえば、日本では小児外科の組織である日本小児外科学会の正会員だけで約3000人いるとのことですが、日本とほぼ同じ数の子ども(15歳未満人口)がいるミャンマーでは、全国で小児外科医は15人程度しかいないと言われています。
二つ目は、医療費が高くて支払えないこと。私たちはカンボジアの病院で小児がんの治療をしていますが、一人当たりおよそ100万円~120万円ほどの費用がかかります。カンボジアでは、全ての人が健康保険を使えるわけではないので、小児がんになった子どもを治療しようと思ったら、これだけの費用を自ら支払う必要があります。でも、これはカンボジアの1世帯あたりの平均年収の6年分以上。よほど裕福な家庭でなければ、簡単に払うことはできません。世界では、毎年、1億人が医療費の支払いのために極度の貧困に陥っていると考えられていますが、私たちの活動国でも、「家族の命か、生活か」という選択を強いられる人が少なくないのです。
こうした理由で、先進国では80%~85%が治る小児がんが、先進国以外のすべての国を合わせても30%程度しか治らない病気となっています。
  • ジャパンハート
「生まれた国が違うから、治せるはずの病気で命を落とす」。そんな、生存率の格差(サバイバルギャップ)を限りなくゼロにしたい。
ジャパンハートは、そんな思いで途上国における小児がん治療に取り組んできました。
カンボジアの首都プノンペンの郊外にある「ジャパンハートこども医療センター」では、小児がん治療を開始してから今年で6年目に入りました。2022年度はカンボジアで小児がんと診断を受けた患者のおよそ6人に1人にあたる、113人の小児固形がん患者を治療。日本に15カ所ある小児がん拠点病院のどこよりも多くの小児固形がん症例を取り扱ったことになります。
およそ40床の小児科病棟は、いつも子どもたちでいっぱい。この5年間で治療実績は着実に上がりましたが、ジャパンハートの病院を受診した時点でかなり病状が進行している子どもが多いこともあり、当院で治療した小児がん患者の生存率は56%にとどまっています。なにより、私たちの病院に来ることができない子どもたち、それ以前に診断すら受けられていない子どもたちのことを考えると、私たちがすべきことはまだまだたくさん残されています。
世界保健機関(WHO)は、2030年までに世界全体で、小児がんの生存率を60%以上にすることを目標としています。現在、「生存率30%」の国々に住んでいる小児がん患者の数は、世界全体の小児がん患者の85%。実現までの道のりがどれほど遠くても、私たちはあきらめずに進み続けます。
  • ジャパンハートの活動写真
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